近年、デザインのあり方が大きく変わりつつあります。かつては専門的な知識やスキルを持つデザイナーだけが扱えたデザイン制作。しかし、Figma、Studio、Canva、Adobe Express などのツールが普及することで、デザイナーとノンデザイナーがより密接にコラボレーションできる環境が整ってきました。特に企業のデジタルマーケティング担当者や広報あるいは広告担当者など内外問わず情報発信の担い手が、これまでデザインの専門性が求められていた領域でも、業務の迅速化、予算の制約、ブランド管理の必要性からノンデザイナーとして積極的にデザイン制作に関わる動きが加速しています。本記事では、デザインツールの進化と、それを活用した共創の方法について考察します。

デザインツールの進化がもたらした変化とは?

1. 誰もがデザインを楽しめる時代に

以前は、デザインをするためには専門知識が必要でした。しかし、現在ではテンプレートやAIのアシスト機能を活用すれば、デザイン初心者でもまずは簡単にポスターやプレゼン資料、SNS投稿を作成できます。Canvaは豊富なテンプレートと直感的な操作性で、デザインのハードルを大幅に下げました。また、Figmaのようなツールはリアルタイムの共同作業を可能にし、ノンデザイナーでもプロジェクトに関与しやすくなっています。

2. デザインツールのユーザー体験が向上

デザインがより使いやすくなることで、ユーザー体験(UX)も向上しています。例えば、Studioのようなノーコードツールを活用することで、開発者でなくてもウェブサイトをデザイン・公開できるようになりました。こうした変化は、ビジネスのスピードを加速させ、新しいアイデアの実現を容易にしています。

デザインツールの進化によるプロのデザイナーの役割は?

以前は、デザイン制作にIllustratorやPhotoshopといった高度なツールを扱うスキルが必要でした。しかし、FigmaやCanvaのような直感的なデザインツールが登場し、専門的な知識がなくても簡単にデザインができる環境が整いました。これにより、デザイナーの役割も「デザインを制作する人」から「デザインの方向性をリードする人」へとシフトしていきます。特に企業においては、デザイナーがノンデザイナーと協力しながらブランドの一貫性を保ち、デザイン戦略を立案することが求められていくでしょう。ここでは、コラボレーションを可能にする代表的なデザインツールの紹介と特徴を見ていきます。

Figma – チームでのデザイン制作を加速させる

 主な特徴
•クラウドベースでリアルタイム共同編集が可能
•デザイナーとノンデザイナーが同じ画面で作業できる
•プロトタイピング機能が充実し、UI/UXデザインに最適

活用例
マーケティングチームがFigmaを活用し、デザイナーと一緒に広告バナーやLPのデザインを作成。フィードバックをリアルタイムで共有しながら、迅速な改善が可能。

Studio – ノーコードでWebサイトをデザイン・公開

 主な特徴
•ノーコードでWebサイトが作れる
•直感的なUIで、デザインと実装を同時に行える
•デザイナーとエンジニアの役割分担を最適化

活用例
医療機関がStudioを使い、採用サイトをデザイナーとマーケティングチームが共同で作成。コーディング不要でスピーディーに公開し募集。

 Canva & Adobe Express – 誰でも簡単にビジュアル制作

 主な特徴
•豊富なテンプレートを活用し、簡単にデザイン作成可能
•チームでの共有機能が充実
•SNS投稿やチラシなど、多様な用途に対応

活用例
ノンデザイナーのマーケティング担当者がCanvaを活用し、SNS投稿やプレゼン資料を作成。デザイナーはブランドガイドラインの作成に注力し、チーム全体で一貫したデザインを維持。

デザイナーとノンデザイナーの共創方法

では、実際にデザインツールを使ってデザイナーとノンデザイナーとの共創を進めるためには、どのようなアクションが必要でしょうか。

1.デザインガイドラインを作成し共有する

デザイナーがブランドカラーやフォント、レイアウトのルールを定めたデザインガイドラインを作成し、ノンデザイナーと共有。CanvaやFigmaのライブラリ機能を活用することで、統一感のあるデザインを維持できます。

2.ノンデザイナーが簡単に修正できる環境を整える

STUDIOやCanvaのようなツールでは、デザイナーがベースデザインを作成し、ノンデザイナーがテキスト変更や画像差し替えを行うことが可能。これにより、細かな修正をデザイナーに依頼する手間が省けます。

3.定期的なレビューを行い、品質を維持する

ノンデザイナーが制作したデザインをデザイナーがチェックし、フィードバックを提供する仕組みを構築。Figmaのコメント機能を活用すれば、スムーズなフィードバックが可能です。

AIの進化がデザインのあり方を変えていく

AIの進化も、デザイナーとノンデザイナーのあり方を大きく変えていくことでしょう。FigmaやCanva、Adobe ExpressにはすでにAI機能が搭載されており、デザインの自動生成や修正が可能になっています。ここでは、主なAI機能をご紹介します。

Figma AI

ワイヤーフレームの自動生成やデザインコンポーネントの最適化など

Canva AI

AIがデザインを自動提案し、ノンデザイナーでも洗練されたビジュアルを作成可能。また背景除去や画像補正など、プロレベルの編集がワンクリックで可能など

Adobe Express(Adobe Firefly)

テキスト入力からAIが画像を生成(ジェネレーティブAI)や画像内の要素をAIが自動補完・修正など

AIの活用により、ノンデザイナーでもプロフェッショナルなデザインを容易にする時代が到来しています。現時点でプロの目から見て、デザインや画像生成のクオリティについては、賛否がありますが、確実に進化していくことでしょう。また、AIが生成するデザインは確かに便利ではあるが、それがブランディングとして適合しているとは限らない場合もあります。最終的には デザイナーによる「デザイン判断」を行っていかなければなりません。

まとめ

デザインツールの進化により、デザイナーとノンデザイナーの共創がますます進んでいます。今後のクリエイティブの現場では、デザイナーは「作る人」から「導く人」へと役割を変え、ノンデザイナーがデザイン制作に参加する機会が増えていくでしょう。
企業のデジタルマーケティングの現場に限らず様々な業種、業界でも、これらのツールを活用することで、より迅速かつ効果的なビジュアルコミュニケーションが実現できます。デザインの共創を取り入れ、次世代のクリエイティブを推進していきましょう。