前回の記事では、医療やヘルスケア分野のスタートアップに必要なデザインプロセスを中心に解説しました。そこからサービスを展開する上で必要なアプリのUI/UXデザイン、サービスのロゴデザイン、ランディングページ、説明動画やパンフレット、キャラクター開発といったアウトプットに移って行きます。それぞれのアウトプットには役割があり、連携し合うことが重要です。しかし、ここで、同じサービスとは思えない制作物になってしまい、デザインが機能せずにユーザー(患者、医療従事者など)に届かない、あるいは認知度が上がらないと言ったことになってしまうことがあります。このような現象を回避するために意識しなければならないポイントがいくつかあります。そこで今回は基本となる「デザインの一貫性」について考えていきます。
前回の記事:【医療・ヘルスケアスタートアップの成長を加速させる】価値を届けるデザインプロセス
デザインの一貫性とは
では、冒頭の「デザインの一貫性」とはどう言うことでしょうか?わかりやすく説明するには、「知らない街を旅する」 ことに例えるとわかりやすいかもしれません。
知らない街に降り立ち、目的地へ向かおうとします。道案内の標識が、場所によってデザインや言語がバラバラだと、非常に困惑しますよね。どの標識が正しいか判断するのにストレスを感じ、目的地にたどり着くのに時間がかかります。しかし、標識のデザインがどこでも統一され、色や形、フォント(書体)が一貫していれば、すぐに正しい方向がわかります。結果、スムーズに目的地へ到着でき、安心感すら覚えるでしょう。
デザインの一貫性とは、サービスの中でユーザーが迷子にならないための「統一された標識」のようなものです。
ストレスが生まれる一貫性の欠如とは
一貫性が欠けたデザインは、先ほどの旅人の例と同じようにユーザーに不安感を与え、ストレスを生み出します。では、どのような状態を言うのでしょうか?その原因を3つほど例として上げます。
1.異なる見た目に戸惑う
アプリでは青いボタンが「次へ」だったのに、紹介サイトでは赤いボタンが「次へ」と表示されていると、ユーザーは「どちらが正しい操作なのか?」と混乱します。
2.操作の予測ができない
動画やパンフレットで説明していた内容がアプリやサイトの言葉や表現と異なると、頭の中が混乱し、情報を信頼できなくなります。
3.認知負荷が増える
アプリの操作やウェブサイトに一貫性がないと、ユーザーは新しい環境に慣れるたびに頭を使い、ストレスを感じる原因になります。
一貫性がもたらす「ストレスのない体験」へ
では、一貫性のあるデザインがどのようにストレスを軽減するのか、3つのポイントで解説します。
1.デザインが「学習の必要性」を減らす
アプリ、ウェブサイト、動画、パンフレットが同じデザインのルールで作られていれば、ユーザーは「新たに覚える」必要がありません。ボタンの色や位置、キャラクターの使い方が統一されていると、「こうすればいい」とすぐに理解できます。
2. 情報伝達がスムーズになる
紹介サイトのデザインやロゴや配色、フォントがアプリやパンフレットと一致していると、ユーザーは「同じサービスだ」と直感的に認識できます。これにより、情報が異なるメディア間でつながり、スムーズな体験を提供します。
3. ブランドへの信頼感を育む
一貫性があることで、「このサービスはしっかり設計されている」と感じ、ユーザーの不安を取り除きます。
上記のポイントを最大限発揮するために、デザインシステムという、デザインの一貫性を担保し、より良いデザインを行うための仕組みを構築することもプロジェクトの規模によっては必要です。デザインシステムを構築することで、ブランド力の向上を目指すことができます。
一貫性によって快適なサービスを構築する
例えば、メディカル系アプリがそのUIデザインを一貫させることで、以下のような変化をもたらすことが考えられます。
アプリとパンフレット、サイト全体で「青と白」を基調とした色とシンプルなアイコンを採用。この場合ユーザーは患者なので、過度な装飾的なデザインは避け、迷わせないことが重要です。患者は「どこに行っても同じデザインと使い方」に安心し、初めて利用した際の不安が大幅に軽減されることが予想されます。
結果、ユーザーからの問い合わせ件数が減少。スタッフの対応も減り、サービスの充実度をさらにアップするための活動の時間も増えていきます。
まとめ
一貫性とは、ユーザーがサービス内で「迷わず進むための道しるべ」です。それは「統一された標識」を持つ街と同じく、ストレスを軽減し、安心感を提供します。サービスの中で一貫性を保つことは、単なるデザインの統一ではなく、ユーザー体験を豊かにするための基本原則なのです。
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