「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営のことです。その経営を取り入れている企業はどんな企業?と考えた場合、まず真っ先にアップルが思い浮かぶかもしれません。どちらかと言うと海外企業のイメージが強い印象です。今回は、日本国内の企業のデザイン経営について考察していきます。

 

デザイン経営はいつ頃から

一般的に、デザイン経営という概念は21世紀初頭から徐々に注目され始めました。特に2010年代に入ってから多くの企業がこのアプローチを採用し始めたとされています。企業がデザインを経営戦略として積極的に取り入れることで、イノベーションの推進やブランド価値の向上が期待されました。また国内では、2017年、経済産業省・特許庁による有識者からなる「産業競争力とデザインを考える研究会」の議論の結果、2018年5月に報告書『「デザイン経営」宣言』を取りまとめ、デザイン経営を推進しています。

特許庁によるデザイン経営の推進
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html

このような動きの中で、国内企業においても、デザイン経営は注目を集め、今では一般化しつつあります。誰もが知っている企業のサイト内で、デザインにおけるパーパスやカルチャー、デザインの組織が語られ、また、デザインからは少し距離を置いた企業などでもデザインが戦略的に扱われ、デザインに関する情報発信も積極的です。デザインというキーワードが、持続可能な成長とイノベーションの促進、そしてブランド構築や採用活動においても不可欠な要素となっている証拠でもあります。

 

各企業のデザイン経営へのアプローチは

未来を映すニコンのデザイン革新


ニコンのデザイン経営は、単に製品の色や形をデザインするのではなく、クリエイティビティと顧客の潜在的ニーズを満たすことに重点を置いています。未来志向のアプローチで、製品・サービスの体験設計からブランド価値の向上に至るまで、幅広い活動を展開しています。顧客の体験を向上させるためのデザイン、ブランド構築、イノベーションの推進にデザインを利用し、社会課題の解決にも貢献している点が特徴です​​。

出典:ニコン
https://www.jp.nikon.com/company/technology/design/works/fy22.html

 

富士通が描く持続可能な未来のためのデザイン戦略


富士通のデザイン経営は、デザイン思考を用いて、継続的なイノベーションを生み出し、社会に信頼をもたらし、より持続可能な世界を作ることを目指しています。富士通では、人とテクノロジーの関わりを再定義し、顧客体験やビジネスモデルのイノベーションにデザインを活用しています。具体的には、ユーザー中心のアプローチを通じて、技術的な課題解決だけでなく、社会的な価値創造にも貢献していることが特徴です​​。

出典:富士通
https://www.fujitsu.com/jp/about/businesspolicy/tech/design/

 

金融の未来をデザインする三井住友の挑戦


三井住友のデザイン経営は、「最も選ばれる金融グループ」を創ることを目標とし、デザインの力で顧客体験を革新することに注力しています。デザインを通じて、銀行サービスの提供方法を時代に合わせて変化させ、顧客に安心と安全、そして人の温かみを提供することを重視しています。この取り組みには、多様なプロジェクトにおけるデザイン面のリードや、ブランディング、マーケティング施策の改善などが含まれます​​。

出典:三井住友銀行
https://www.smbc-careers.com/design/

 

TangityによるNTTデータの人間中心のデザイン革新


NTTデータの主催するデザインスタジオ、Tangityは、複雑化するデジタルビジネスに対して、人々に寄り添う直感的で触り心地の良いソリューションを提供することで、「新しい変化」を創り出すことに焦点を当てています。Tangityは、イマジネーション、共感、誠実さ、そしてコミットメントの価値を大切にして、顧客や社会に理想的な解決策を提供することを目指しています​​。

出典:NTTデータ
https://tangity.global/ja

 

ユーザー中心のデザイン思考へのシフト

これらの企業のデザイン経営の共通点は、ユーザー中心のデザイン思考を重視し、顧客体験の向上とイノベーションの促進に注力していることです。
各社は、デザインを経営戦略の一部として組み込むことで、ブランドの差別化を図り、市場での競争力を強化しています。また、社会的課題に対する解決策の提案や、持続可能な発展を目指す姿勢にも目を向けています。
これらのアプローチは、デザインが単なる製品の見た目を良くすること以上の価値を持つことを示しています。カタチになる前の見えない部分をデザインし、最終的に顧客に必要とされる企業になっていくことです。

 

デザイナーと共にデザインで、未来を切り拓くこと

これからのデザイナーに求められるものは、単に製品やグラフィック上での見た目を良くするだけでなく、ユーザー中心のアプローチを取り、顧客のニーズに基づいた解決策を提案することです。また、技術の進化や市場のトレンドに敏感であること、多様なステークホルダーとのコミュニケーション能力を持つことも重要なポイントになります。 デザインの力で、企業の持続可能な成長と社会的価値の創出、そして、企業の次なるステージへと向かう可能性を秘めています。