デジタルセラピューティクスやDTxといった言葉をご存知でしょうか?
DTxは「Digital Therapeutics」の略で、「デジタル治療」とも呼ばれ、疾病の予防や診断・治療をソフトウェアやアプリなどで支援していくことです。
わかりやすく言うと患者さんのスマートフォンにアプリをインストールし、治療に役立てるということです。

 

アプリが医師から処方される時代

昨今、歩数計や、ダイエットなどのヘルスケアに関するアプリがたくさんリリースされています。基本的にこれらのアプリは健康の維持管理を行うもので、治療行為といったものは含まれていません。
対して、デジタルセラピューティクス(DTx)に属するアプリは、医学的エビデンスや薬事承認が必要な「SaMD(医療機器プログラム)」に含まれおり、患者の治療目的で、医師が薬のように処方します。患者は、医師の指導のもと、スマホに治療用アプリを入れ、病気を治療していきます。また、保険も適用されます。
デジタルセラピューティクス(DTx)は、このようにヘルスケアプリと一線を置くもので、「治療支援アプリ」や「デジタル薬」とも言われています。

 

身近になりつつある「治療支援アプリ」「デジタル薬」

では、現在の日本国内において、どのような治療支援アプリがあるのでしょうか?
この治療支援アプリは、薬だけでは、治すことが難しい生活習慣病や依存症に効果が高いと期待されています。
すでに、ニコチン依存症治療用アプリ、高血圧治療用アプリを処方している病院があります。また、上記のアプリを皮切りに、不眠障害、糖尿病、ADHDの患者向けなど大手製薬会社や関連企業が、開発に動いています。日本における治療支援アプリなどのDTxの市場規模※は、2022年の2億円規模から、年々拡大し、2035年には、2,850億円の規模になると予測されています。さらにAI技術による診断も広がり、近い将来、遠隔(オンライン)診療で診察し、アプリで治療すると言ったことがあるかもしれません。

※出典元:「富士経済」プレスリリース
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=22055&view_type=2&la=ja

 

ニコチン依存症治療:CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー(株式会社CureApp)
https://sc.cureapp.com/d/

 

高血圧治療:CureApp HT 高血圧治療補助アプリ(株式会社CureApp)
https://cureapp.co.jp/productsite/ht/

 

治療支援アプリのデザインの特徴とは

どのような病気を治療するのかによってデザインや特徴も変わってきますが、基本的には以下のようなことが考えられます。

・毎日使ってもストレスを感じさせない直感的なUIデザイン
・モチベーションやエンゲージメントを維持するための仕組み
・医師と繋がっている安心感を醸成するための機能
・患者さんひとりひとりに合わせて最適化された設定
・セキュリティとプライバシーの保護
などなど

高血圧治療用アプリを例にすると、高血圧症の患者が日々の血圧データを入力し、キャラクターと対話をし、高血圧に関する知識を学んだり、減塩や運動といった行動を習慣づけたりすることを行い治療効果を上げていくといったイメージです。このように、アプリが治療目的で利用されることを考慮し、利用者が継続的にアプリを利用し、健康改善を目指すために設計されています。

 

治療という体験をデザインすること

DTxの登場で、デザイナーが、治療を支援する薬のようなアプリを医療関係者や製薬会社と共に開発するといったことが現実となっています。アプリは、デザインなくして、存在できないものです。デザイナーは、アプリ開発において、ユーザー体験を構築するためのUI・UXデザインをリードし、また多くのノウハウを持っています。そういったノウハウを医療の世界に生かし、医師と患者との間により良いコミュニケーションをデザインし、治療というユーザ体験の構築をデザイナーが担う場面は、今後ますます増えていくことでしょう。